親の通帳や暗証番号、どう聞く?切り出し方
親にお金の話を切り出せない家族へ。聞いておくこと、聞かなくていいこと、帰省中に話を進める順番を、警察庁や全国銀行協会、厚生労働省の案内をもとに整理します。
目次
この記事の要点
- 聞くのは暗証番号ではなく、口座の場所と置き場所
- 片付けや帰省を口実に、親の困りごとから話す
- 1回で終えず、帰省のたびに少しずつ進める
「親の通帳の場所を、一度聞いておきたい。でも、切り出したら『財産を狙っているのか』と思われそうで怖い」。帰省が近づくと、こうした迷いを抱える方は少なくありません。この記事では、親にお金の話をどう切り出すか、何を聞いて何を聞かないか、帰省中にどこまで進めるかを整理します。
結論から言うと、**聞くのは「暗証番号」ではなく、「口座がどこにあって、通帳や印鑑がどこにあるか」**です。話の入り口は、お金そのものではなく、片付けや「もしものときの困りごと」にします。1回で終えようとせず、帰省のたびに少しずつ進めるのがいちばん続きます。
なぜ元気なうちに聞くのか
親に何かあってから聞こうとすると、本人が話せない状態になっていることがあります。入院して意識がはっきりしない、認知症で口座の場所を思い出せない。そうなると、どの銀行に口座があるのかさえ、家族には分かりません。
もう一つの理由は、家族の気持ちです。入院や手術を目の前にした親に、通帳の場所を尋ねるのは、お互いにつらい場面になります。元気なうちなら、「念のため」と軽く聞けます。
ただし、元気なうちに聞いても、家族が親の口座を自由に使えるようになるわけではありません。親の預金は親のものです。聞いておく目的は、いざというときに「何がどこにあるか」を知っておくことで、引き出す権限を得ることではありません。引き出しの仕組みは、認知症の親の預金、家族は引き出せる?に整理しています。
聞いておくこと、聞かないこと
聞く内容は、場所と連絡先に絞ると、親も答えやすくなります。金額や、何にいくら使っているかは、最初から聞く必要はありません。
聞いておくこと
- 口座のある銀行: 銀行名と、できれば支店名。使っていない古い口座がないかも、あわせて聞きます
- 通帳・印鑑・カードの置き場所: 中身ではなく、どの引き出しや棚にあるかだけで構いません
- 保険・年金の連絡先: 加入している保険会社や、年金の窓口。書類がまとまっている場所を教えてもらいます
- ネットの口座や契約: ネット銀行や、スマホで管理しているサービスの有無。紙の通帳が無い口座は、家族からは見えません
暗証番号は、聞かなくていい
暗証番号は、聞かない前提で話を進めるのがおすすめです。警察庁「キャッシュカード詐欺盗」は、警察官や銀行協会の職員が暗証番号を聞くことはないとして、誰にも暗証番号を教えないよう呼びかけています。親が「暗証番号は人に教えない」と守っていることは、詐欺の備えとして正しい姿です。
家族が聞き出して紙に書き留めると、その紙が探されたり、見られたりするおそれも生まれます。暗証番号を共有する代わりに、銀行が用意している家族向けの手続きがあるか、親と一緒に調べる形が安全です。次の章で説明します。
暗証番号の代わりに調べること
銀行には、本人の判断能力があるうちに、親族を代理人として届け出る仕組みを用意しているところがあります。名前や条件、できることは銀行ごとに違います。
全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」は、高齢のお客さまや代理人と金融取引を行うときの参考として取りまとめられたものですが、会員の銀行に一律の対応を求めるものではない、と明記されています。つまり、同じ家族でも、取引のある銀行によって対応が変わりえます。
| 聞く相手 | 確かめること |
|---|---|
| 取引のある銀行 | 家族を代理人にできるか |
| 取引のある銀行 | 届出に必要な書類と来店者 |
| 地域包括支援センター | 高齢者の財産管理の相談先 |
| 家庭裁判所 | 成年後見制度の仕組み |
調べ方は、銀行の窓口か電話で「親の口座について、家族を代理人にする方法はありますか」と尋ねるだけです。親が元気なうちなら、親の同席で手続きが進められる場合があります。
判断能力が低下したあとの仕組みである成年後見制度は、裁判所の案内で概要を確かめられます。今すぐ使うものではありませんが、存在を知っておくだけで、親が受け入れやすい話題にもなります。
切り出し方の3ステップ
聞く内容が決まったら、次は話の入り口です。いきなり「通帳はどこ?」と聞くと、身構えられてしまいます。順番を決めて、小さく始めることを心がけます。
1. きっかけを借りる
片付けや、書類の整理、年末の帰省など、自然に書類が出てくる場面を使います。「引き出しがいっぱいだね、一緒に整理しようか」と手を動かしながらなら、お金の話に身構える前に、置き場所の話に入れます。実家の片付けの進め方は、実家の片付けを親が嫌がるにまとめています。
もう一つ使いやすいのは、周りの人の出来事です。「友達の親が入院して、手続きで困ったらしい」と話せば、「うちはどうしておく?」と親から話が出ることもあります。
2. 困りごとから聞く
通帳の場所そのものより、「もしものとき、誰が困るか」から入ります。たとえば次のような言い方です。
- 「入院したとき、病院の手続きを私がすることになるよね。そのとき困らないようにしたいんだ」
- 「どの銀行を使っているかだけ、教えてもらえる? 中身は見ないから」
- 「聞いたことは、私のメモにも書かないよ。置き場所だけ覚えておく」
大切なのは、**「あなたのお金を知りたい」ではなく「あなたが困らないようにしたい」**という順番です。厚生労働省は人生会議について、望む生き方やもしものときの医療やケアを、前もって家族等と話し合っておく取り組みだと説明しています。お金の話も、同じように「親の希望を聞く」形で進めると、構えにくくなります。
3. 1回で終えない
親が話したがらなければ、その日はそこで止めます。今日は「話題に出した」だけで十分です。 次の帰省で、前回の続きとして軽く触れます。通帳の話を渋った親も、片付けが進んで書類が減ると、自分から「これも整理しておくか」と言い出すことがあります。
聞いたあとの扱い方
聞いた内容は、家族の中で1か所にまとめることが大切です。1人だけが知っていると、その人に連絡がつかないときに意味がなくなります。一方で、金額まで記録すると、紛失や流出の心配が増えます。
- 書くもの: 銀行名、支店名、通帳や印鑑のおおよその置き場所、保険会社の連絡先
- 書かないもの: 暗証番号、ログインのパスワード、口座の残高
- 共有する相手: きょうだいや、親が了承した人。範囲は親と決めます
- 見直す時期: 年末や夏の帰省のたび。口座の解約や追加があれば書き換えます
緊急時の連絡先をまとめるカードも、同じ考え方でつくれます。一人暮らしの親の緊急連絡先、誰に何を揃える?では、現金や通帳を入れず、連絡先と医療の情報だけをまとめる形を紹介しています。
親と話す時間をつくる
お金の話は、1回の帰省で片付けようとするほど難しくなります。普段から短い連絡を重ねて、「話してもいい相手」と思ってもらえる関係が土台になります。
BabuuTalkは、実家に置いたタブレットに毎日の声かけが届き、親が応えたかどうかが家族のLINEに通知される仕組みです。また、家族がLINEで書いた伝言は、タブレットの掲示板に大きく表示されます。「今度帰ったら、一緒に書類を整理しようね」といった予告を送っておくと、親が心の準備をして帰省を迎えられます。
Android端末(タブレットや使っていないスマホ)があればアプリは無料で、続けて使うならタブレットが見やすいです。詳しくはトップページをご覧ください。
親の介護が始まる前に家族で決めておくことは、介護が始まる前に、家族で決めておくことにもまとめています。お金の話は、その中の一項目として切り出すこともできます。
次の帰省までにすること
最後に、次の帰省までにできることを3つ挙げます。
- 取引のある銀行に電話で聞く。 「親の口座について、家族を代理人にできる仕組みはありますか」と尋ねて、条件と必要書類をメモします。親の了承を得てから行います
- 親に電話で予告する。 「今度帰ったら、引き出しの書類を一緒に整理しよう。もしものとき、私が困らないように」と、目的を添えて伝えます
- 聞くことを紙1枚に絞る。 銀行名、通帳と印鑑の置き場所、保険の連絡先。暗証番号は書きません
全部を一度に聞き出そうとしなくて構いません。まず「帰ったら一緒に整理しよう」と伝えるところから始めてください。