実家の片付けを親が嫌がる。帰省で無理なく進める順番
親が実家の片付けを嫌がるときの切り出し方と、短い帰省で進める順番、迷う物の扱い、粗大ごみの出し方、不用品回収の注意点を、消費者庁・国民生活センターの案内をもとに整理します。
目次
この記事の要点
- 「捨てて」ではなく、通り道の安全から切り出す
- 帰省中は玄関・廊下・階段だけ。全部は終わらせない
- 出し方は自治体の窓口が先。「無料」の回収は慎重に
帰省するたびに、実家の廊下に紙袋が増えている。押し入れの前に段ボールが積まれている。「そろそろ片付けようか」と言ってみたら、「余計なことを言わないで」と返されて、それきりになってしまった。そんな経験はありませんか。
この記事では、親が片付けを嫌がる理由、切り出し方、短い帰省で進める順番、迷う物の扱い、粗大ごみの出し方、不用品回収で気をつけることを整理します。結論から言うと、いきなり「捨てる」話をせず、「通り道の安全」から始めるのがいちばん受け入れられやすいです。
親が片付けを嫌がる理由
親が嫌がるのは、物への執着というより、「自分の暮らしを否定された」と感じることが多いからです。実家の物は、親が何十年もかけて自分で選んで置いてきたものです。それを子どもが「いらないでしょ」と言うと、物だけでなく、これまでの暮らしまで否定されたように聞こえます。
もう1つは、片付けるための体力と段取りが、親にはもう重いという事情です。片付けたい気持ちはあっても、どこから手を付けるか、重い物をどう運ぶか、何曜日に何を出すかを考えるだけで疲れてしまいます。嫌がっているように見えて、実は「できないから触れたくない」ということもあります。
だから、子どもの側にできるのは、説得して捨てさせることではなく、判断は親に任せて、体を使う部分と段取りを引き受けることです。
切り出す言葉を変える
同じ片付けの話でも、言い方で受け止められ方が変わります。「捨てて」「ごみばかり」は禁句にして、親の安全と暮らしやすさの話から入ります。
反発されやすい言い方
避けたい
- 「こんなに要らないでしょ」
- 「全部捨てたほうがいいよ」
- 「何が入ってるか分からないでしょ」
受け入れられやすい言い方
試したい
- 「廊下で転ぶと心配だから」
- 「重い物は、私が来たときに運ぶね」
- 「これはどうしたい?」と聞く
捨てる話ではなく、安全と手伝いの話から入ります
安全の話には、根拠があります。消費者庁の資料では、65歳以上の自宅での転倒事故は5年間で275件寄せられ、8割以上が通院または入院が必要なけがでした。転倒事故の約半数は自宅で起きています。
起きやすい場所として、浴室・脱衣所、庭・駐車場、ベッド・布団まわり、玄関・勝手口、階段が挙げられています。出典:消費者庁「10月10日は『転倒予防の日』、高齢者の転倒事故に注意しましょう」(2020年)。
玄関や階段は、物が置かれやすい場所でもあります。「転ばないように、通り道だけ空けておこう」と言えば、親の持ち物を減らす話ではなく、親の体を守る話になります。段差や手すりのことは、実家の転倒予防、手すりや段差解消は介護保険で直せる?にまとめています。
帰省で進める順番
帰省の滞在は、1〜2泊のことが多いはずです。その間に家中を片付けようとすると、中途半端に物が広がって、かえって歩きにくい家になります。全部は終わらせないと最初から決めておくほうが、うまく行きます。
1. 通り道をあける
最初の1時間は、玄関、廊下、階段、トイレまでの道の床から物をどけます。置き場所に困るなら、いったん1つの部屋の隅にまとめて構いません。ここが片付くだけで、転ぶ危険は目に見えて減ります。
2. 親と一緒に分ける
次に、親が毎日使う場所を1か所だけ選びます。台所の棚、玄関の靴箱、洗面所の下など、小さな場所が向いています。親の目の前で「使う」「迷う」「手放す」の3つの箱に分け、決めるのは親、運ぶのは自分、と役割を分けます。
3. 出し方を決める
手放す物は、帰省中に出し方まで決めます。出す日と方法が決まっていないと、袋に詰めた物が玄関に残り、通り道をふさいでしまいます。出し方は、後の「出すときの方法を選ぶ」で整理します。
4. 次の帰省に残す
押し入れ、納戸、仏間など、大きな場所は次に回します。帰る前に「今度は台所の下の棚をやろうね」と1つだけ約束しておくと、次の帰省の目的が決まり、親も心づもりができます。
迷うものの扱い方
片付けが止まるのは、たいてい「迷う物」の前です。思い出の品、人からもらった物、まだ使えそうな物は、その場で決めさせようとすると、親は意地になります。
迷う物は、期限を決めて箱に入れておきます。「この箱は、次に帰ってくるまで置いておこう」と言えば、親は手放さずに済み、床からは物が減ります。次の帰省で箱を開けて、もう一度見てもらいます。
- 思い出の品 写真や手紙は、片付けの時間とは別に、お茶を飲みながら見る時間を取る
- まだ使える物 譲る、寄付するなど、使ってくれる人がいる行き先を一緒に探す
- 人からの贈り物 親が気にするので、無理に手放させず「迷う箱」に入れる
- 書類や通帳 子どもが中身を見て仕分けない。親本人に確認してもらい、置き場所だけ決める
書類や通帳は、親が元気なうちに「どこにあるか」だけを聞いておくと安心です。介護が始まる前に決めておくことは、介護が始まる前に、家族で決めておくことにまとめています。
出すときの方法を選ぶ
手放す物は、種類によって出し方が違います。迷ったら、まず実家の市区町村の清掃担当窓口に聞くのが確実です。粗大ごみの申し込み方法や収集日は、自治体ごとに決まっています。
自治体の回収
粗大ごみや家庭ごみを市区町村に出す
- 先にすること
- 申し込み方法と収集日を確認
- 向く物
- 家具、布団、日用品
- 注意
- 運び出しは自分たちで
家電4品目
エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機
- 先にすること
- 購入した店などに依頼
- 向く物
- 家電リサイクル法の対象
- 注意
- 自治体の粗大ごみでは出せない
譲る・寄付する
使ってくれる人や団体に渡す
- 先にすること
- 受け入れ条件を確認
- 向く物
- 衣類、食器、本
- 注意
- 親が納得した行き先にする
手放す物は、種類で出し方が決まります
親が自分で重い物を運べない場合は、自治体によっては、高齢者のごみ出しを手伝う仕組みがあります。環境省は、高齢者のごみ出し支援の導入に必要な情報を、手引きと事例集にまとめています。ただし、対象になる人や、運び出せる物の範囲は自治体ごとに違うので、実家の市区町村の窓口で確認してください。参考:環境省「高齢者のごみ出し支援制度の導入に関する説明会」。
業者に頼む前の注意
量が多くて自治体の回収では間に合わないとき、不用品回収の業者に頼みたくなります。ここで慌てて、チラシや広告で最初に見つけた業者に決めてしまうと、トラブルになることがあります。
国民生活センターによると、不用品回収サービスの相談は、2018年度の1,354件から、2021年度は2,231件に増えています。広告の定額パックで申し込んだのに、作業後に高額な料金を請求された、という相談が目立ちます。
同センターは、一般家庭のごみを回収するには市区町村の許可が必要だとして、依頼前に、市区町村のホームページなどで許可業者かどうかを確認し、複数社から見積もりを取るよう勧めています。出典:国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル」(2022年)。
作業後に想定外の請求を受けたときは、その場では支払わず、納得できる金額を後日払う意思を伝えるよう案内されています。困ったときは、消費者ホットライン「188」で、最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。
こうした訪問や電話は、片付けの最中の親が受けてしまうことがあります。「回収します」と言われても、その場では返事をせず、子どもに電話してから決める、と決めておくと安心です。詐欺電話の備えは、親への詐欺電話が心配。今日から家族ができる備えに書いています。
次の帰省までにすること
1回の帰省で終わらないぶん、次の帰省までの間に、親の気持ちを途切れさせないことが大切です。物の量を減らすことより、「また一緒にやろう」と思ってもらえる関係を続けるほうが、結局は片付けが進みます。
BabuuTalkは、LINEで送った写真が、実家のタブレットのアルバムに届く仕組みです。片付けの途中で見つけた古い写真を、帰省中にスマホで撮って送っておけば、親は実物を手放したあとも、タブレットの画面で見返せます。写真は「手放す物」ではなく「届ける物」になるので、迷う箱が1つ減ります。
Android端末(タブレットや使っていないスマホ)があればアプリは無料で、続けて使うならタブレットが見やすいです。詳しくはトップページをご覧ください。年末の帰省で見ておきたい場所は、年末に帰省したら、実家の何を見る?にもあります。
今週、親に聞くこと
最後に、今週できることを2つ挙げます。
- 親に電話して、「次に帰ったとき、廊下と玄関の物を一緒にどけたいけど、いい?」と聞く。 捨てる話ではなく、通り道の話として切り出します
- 実家の市区町村の清掃担当窓口に、粗大ごみの申し込み方法と、高齢者のごみ出し支援の有無を電話で聞く。 帰省前に出し方を知っておくと、当日に迷いません
親が乗り気でなければ、今回は見送って構いません。「転ぶと心配だから」と一言伝えるだけでも、次の帰省のきっかけになります。