遠距離介護の帰省、会社の休みはどこまで使える?
親の通院の付き添いや手続きで実家に帰るとき、介護休暇・介護休業・短時間勤務はどう使い分けるか。厚生労働省の資料をもとに、給付金と会社への伝え方まで整理します。
目次
この記事の要点
- 介護の休みは「介護休暇」「介護休業」「勤務の措置」の3つ
- 通院付き添いや手続きの帰省は、まず介護休暇(年5日)
- 介護休業は介護の体制を整える期間(通算93日、3回まで)
親の通院に付き添うため、実家まで新幹線で3時間。月に1回は帰りたいけれど、有給休暇だけでは足りなくなってきた。そんなとき、「介護で休める制度があるはず」と調べ始める人は少なくありません。
先に結論を書きます。介護の休みは3種類あり、帰省の目的によって使うものが違います。 通院の付き添いや役所の手続きなら介護休暇、介護の体制を一から整えるなら介護休業、毎週の通院のように続くものなら短時間勤務などの措置が向いています。この記事では、その使い分けと、給付金、会社への伝え方、帰省の交通費の考え方をまとめます。
なお、この記事は2026年10月時点の情報です。制度の詳細は厚生労働省「育児・介護休業法について」で確認してください。会社ごとの上乗せ(有給か無給か、対象範囲など)は、勤務先の就業規則を見るのがいちばん確実です。
休みの制度は3種類
制度の名前が似ていて、混乱しやすいところです。厚生労働省の資料では、それぞれの役割がはっきり分けて書かれています。
介護休暇
日々のスポットの用事に
- 日数
- 年5日(2人以上は10日)
- 単位
- 時間単位でも取れる
- 向く場面
- 通院の付き添い・手続き
介護休業
体制を整える期間に
- 日数
- 通算93日・3回まで
- 単位
- まとまった休み
- 向く場面
- 施設探し・退院後の準備
短時間勤務など
続く介護に
- 内容
- 時短・時差・テレワークなど
- 単位
- 毎日の働き方
- 向く場面
- 毎週の通院の付き添い
3つの制度の位置づけ。会社の規程で、上乗せがある場合もあります
厚生労働省のあらましでは、介護休業は「要介護状態にある対象家族の介護の体制を構築するため、一定期間休業する場合に対応するもの」、介護休暇は「介護保険の手続や通院の付添いなど、日常的な介護のニーズにスポット的に対応するもの」と位置づけられています。短時間勤務などの措置は、日常的な介護のニーズに定期的に対応するものです(出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」令和7年4月1日、10月1日施行対応)。
つまり、休業は「介護を自分でやり続けるための休み」ではありません。 親の状態が変わったときに、介護保険の申請、ケアマネジャーとの相談、サービスの手配、必要なら施設探しをして、体制を作るための期間です。ここを取り違えると、「93日では足りない」と不安になってしまいます。
介護休暇は何に使える
遠距離介護の帰省でまず使うことになるのが、介護休暇です。厚生労働省のあらましでは、要介護状態にある対象家族の世話をするために、1年度に5労働日まで(対象家族が2人以上なら10労働日まで)取れるとされています。時間単位での取得も可能です。
帰省の目的で考える
- 通院の付き添い:診察の時間と移動時間だけ、半日や時間単位で休む
- 介護保険の手続き:申請や更新の書類を、役所や地域包括支援センターに出す日
- ケアマネジャーとの面談:ケアプランを見直す日に、家族として同席する
- 介護サービスの見学:デイサービスや施設を、親と一緒に見に行く
どれも「その日に必要な用事」がはっきりしています。1年に5日だと足りないと感じるかもしれませんが、要点は、日数を使い切る前に、他の制度や有給休暇も組み合わせることです。
対象になる家族と条件
対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。条件は、要介護状態(ケガや病気、障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にあることです。
2025年4月からは、「勤続6か月未満の人は対象外にできる」という労使協定の取り決めが廃止されました。入社して間もない人も、介護休暇を使える形になっています(出典:同上)。ただし、週の所定労働日数が2日以下の人は、労使協定で対象外にされている場合があります。
介護休業の使いどころ
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分けて取れます。「親が急に入院して、退院後の生活を整えたい」「要介護認定を受けて、サービスを組み立てたい」といった、体制づくりの時期に向く制度です。
-
親の状態が変わった
入院、骨折、認知症の診断など。介護保険の申請が必要になる転機です。
-
体制づくりに休業を使う
地域包括支援センターへの相談、要介護認定の申請、ケアマネジャーの決定、サービスの手配までを、まとまった休みで進めます。
-
日常に戻る
体制ができたら職場に戻ります。以後の通院などは、介護休暇や短時間勤務で対応します。
3回に分けられるので、「初回に1か月、様子を見て次に2週間」のような使い方もできます。93日を一度に使い切らず、状況が変わる節目のために残しておくと考える人が多いのは、そのためです。
毎週の通院は別の制度で
毎週の通院の付き添いのように、続く用事には、休暇や休業よりも、所定労働時間の短縮などの措置が向いています。所定外労働の制限、時間外労働の制限、短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤、テレワークなど、会社が用意する制度が使えます。
何が使えるかは会社によって違います。人事部や総務に「家族の介護が必要になりそうで、柔軟な働き方を知りたい」と聞いてみると、案内してもらえます。
給付金と申し出の順番
介護休業の間は、会社から賃金が出ないことがあります。そのとき雇用保険から出るのが介護休業給付金です。支給額は、原則として休業開始時賃金日額に支給日数と67%をかけた額です(出典:厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」)。受けるには、介護休業の開始前2年間に、被保険者期間が12か月以上あることが条件です。
申請は、原則として事業主を経由して行います。個人で動くより、会社の担当者に任せたほうが早いので、休業に入る前に聞いておきます。
会社への伝え方
-
状況を短く伝える
「親が○○で、介護の体制を整えるために、休みを取る可能性がある」と、直属の上司に早めに共有します。診断名までは求められません。
-
人事・総務の窓口に確認する
介護休暇、介護休業、短時間勤務の規程と、申出の期限・書式を聞きます。
-
帰省の日程を決める
通院や手続きの日が決まったら、そこから逆算して、休みを申し出ます。
帰省の交通費の考え方
新幹線や飛行機の費用は、介護休暇や介護休業の制度に含まれていません。会社が出すかどうかは、会社の規程しだいです。法律上の定めはなく、勤務先に帰省の補助があるかは、就業規則や福利厚生の案内で確認します。
交通機関の側に、介護で帰省する人向けの割引を用意している場合があります。航空会社やJRの案内ページに、対象家族や事前登録などの条件が書かれているので、帰省の頻度が高い人は、予約の前に公式ページで確認してみてください。金額や割引率は変わるので、この記事では書いていません。
会社が案内する仕組み
2025年4月から、会社には新しい義務が加わりました。社員が「家族の介護が必要になった」と申し出たとき、会社は介護休業や両立支援制度の内容、申出先、介護休業給付金について、個別に知らせて、取る意向を確認しなければなりません。社員が40歳になる年度の早い時期にも、介護の制度の情報提供が義務づけられています。
また、要介護状態の家族を介護する社員がテレワークを選べるよう、会社には措置を講じる努力義務があります(出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」令和7年4月1日、10月1日施行対応)。
つまり、「こんなことを会社に聞いていいのかな」と迷う必要は、以前より小さくなっています。 申し出た人に説明する責任が、会社の側にあるからです。
休みの間の実家をつなぐ
休みを使って帰省できるのは、年に数回、数日です。残りの日の実家の様子は、電話や連絡で受け取ることになります。介護休暇の日数に限りがあるからこそ、帰省しない日の様子を知る手段があると、「次に帰るべきタイミング」を判断しやすくなります。
BabuuTalk は、実家のタブレットが毎日声をかけ、その応答が家族の LINE に届く仕組みです。通院の日やデイサービスの時間も、LINE から書いた予定として実家に出せます。実家側の本人は、画面を触らなくて構いません。Android端末(タブレットや使っていないスマホ)があればアプリは無料で、続けて使うなら画面の大きいタブレットが見やすい、という位置づけです。
帰省の日程と、毎日の様子を合わせて考えたいときは、介護が始まる前に、家族で決めておくことや、親が電話に出ない。心配なときに確認する順番も参考になります。まだ相談先が決まっていなければ、親の介護、最初の相談先はどこ?から読んでみてください。
今日できること
どれも今日中に終わることを3つに絞りました。
- 勤務先の就業規則か社内ポータルで、「介護休暇」「介護休業」を探して、申出先を控える。見つからなければ、人事や総務に「制度の案内がほしい」と一言聞きます
- 次に帰省する目的を書き出す。通院の付き添いなのか、手続きなのか、親と話すだけなのか。目的が決まると、使う制度が見えます
- 実家の地域包括支援センターを調べて、電話番号を控える。厚生労働省「地域包括支援センターの概要」から、お住まいの都道府県の一覧に進めます
休みの制度は、使い方を知っているだけで、帰省の回数と気持ちの余裕が変わります。まずは1つめの確認から始めてみてください。