親が免許を返納したあと、生活をどう支える?

親が運転をやめたあとの通院・買い物・外出をどう確保するか。返納前に家族で決めること、運転経歴証明書の期限、地域の相談先を一次情報から整理します。

公開 読了 約6分 執筆 株式会社BabuuTalk

玄関先で車の鍵を手にする高齢の父親と、見守る家族
目次

この記事の要点

  • 返納のあとに困るのは、手続きより「行き先ごとの足」
  • 運転経歴証明書は、返納などから5年以内に申請する
  • 外出が減っても、毎日の接点があれば変化に気づける

「お父さんが、そろそろ免許を返すと言い出した」。そう聞いて、安心しながらも、次の心配が浮かぶ人は多いと思います。病院はどう通うのか、買い物は、友人の集まりは。運転は事故の心配だけでなく、暮らしの足でもあったからです。

この記事では、返納のあとの暮らしを支える方法を整理します。先に結論です。手続きよりも、返納する前に「行き先ごとの足」を決めておくことが大事です。家族が毎回送迎する前提にすると続かなくなるので、地域の仕組みと、離れていてもできる関わりを組み合わせます。

居間のテーブルで、地図とカレンダーを広げて話し合う高齢の父親と娘
返納の前に、地図とカレンダーを広げて「どこに、いつ行くか」を一緒に書き出します

返納で何が変わるか

返納は、運転を続けるかどうかの判断であると同時に、「運転免許証」という身分証をなくす手続きでもあります。変わることは大きく2つあります。1つは、自分で運転して行く手段がなくなること。もう1つは、免許証で済んでいた本人確認を、別のもので行うことです。

身分証の代わり

警察庁によると、運転免許を自主返納した人や、更新せずに失効した人は、運転経歴証明書の交付を受けられます。平成24年4月1日以降に交付されたものは、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として使えます。ただし、自主返納や失効から5年以上たつと交付を受けられません。出典:警察庁「運転免許証の自主返納について」

返納の窓口で一緒に申請するのがいちばん確実です。申請場所や必要書類は都道府県ごとに違うので、返納の予定日が決まったら、親の住む地域の運転免許センターや警察署に確認してください。

特典は地域しだい

返納した人向けの特典は、都道府県や市区町村、事業者ごとに内容が違います。大阪府の「高齢者運転免許自主返納サポート制度」では、返納した65歳以上の人が運転経歴証明書などを提示すると、加盟企業で割引やサービスを受けられます。提示の方法として、マイナンバーカードと交付済みシールなども案内されています。出典:大阪府「高齢者運転免許自主返納サポート制度」

特典はあくまで「あれば助かる」ものです。特典の有無で返納を決めるのではなく、実家の地域に何があるかを調べる材料にしてください。

行き先で足を決める

「移動手段をどうするか」と大きく考えると、話が進みません。親がこの1か月に実際に運転して行った場所を、1つずつ聞いてみてください。行き先ごとに、必要な頻度と、向いている手段が違います。

頻度は目安です。親の1か月の外出を書き出して、実際の回数に置き換えてください
行き先 頻度向く足
病院・薬局 月に数回送迎、タクシー、通院のバス
食料品の買い物 週に数回宅配、買い物代行、近所の店
友人・趣味の集まり 週に1回前後乗り合い、仲間と相乗り
役所・銀行 年に数回家族の付き添い、窓口の代行

病院は最優先

通院は、行けなくなると困る度合いがいちばん大きい行き先です。診察日が決まっているので、家族の予定を合わせやすい面もあります。通う病院が駅やバス停から遠い場合は、診察券と一緒に「帰りの足」まで決めておくと安心です。

かかりつけ医を、バスや駅から無理なく通える場所へ変える選択肢もあります。これは医療の判断になるので、親と主治医に相談して決めてください。

買い物は仕組みに任せる

毎週の買い物を家族の送迎にすると、いちばん早く続かなくなります。宅配や買い物代行、移動販売など、家族の予定に左右されない手段を1つ入れておくと、送迎の負担がぐっと減ります。親が自分で選ぶ楽しみを残したいときは、週1回だけ家族が連れて行き、残りを宅配にする組み合わせもあります。

家族の送迎に頼りきらない

返納直後は「週末は毎回送迎する」と約束していても、仕事や子どもの行事が重なると、少しずつ回数が減ります。家族のせいではなく、距離がある以上、起こりやすいことです。約束が崩れる前提で、地域の仕組みを入れておくと、家族も親も気持ちが楽になります。

バス停のベンチで小さな買い物バッグを持ち、バスを待つ高齢の母親
バス、乗り合い、宅配。家族の送迎以外の足を、複数持っておきます

地域の窓口に聞く

親の住む市区町村の地域包括支援センターが、最初の相談先になります。厚生労働省によると、地域包括支援センターは市町村が設置する、高齢者の総合相談の窓口です。高齢者本人だけでなく家族も相談でき、配食や見守りなど日常の生活支援の調整役も担います。出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

移動の支援の内容(タクシー利用の助成や乗り合いの交通など)は自治体によって違うため、「どんな制度があるか」を電話で聞くのが近道です。窓口の探し方は親の介護、最初の相談先は?遠方の家族が電話する前にで、見守り事業の調べ方は自治体の高齢者見守り事業、実家にもある?調べ方で整理しています。

外出の理由を残す

足が決まっても、「出かける理由」がなければ外出は減ります。運転は、買い物のついでに寄り道したり、知人と会ったりする機会も運んでいました。返納のあとは、目的のある外出を意識して作る必要があります。

予定を書き込む

通院日、集まりの日、買い物の日を、親と一緒にカレンダーに書き込みます。電話をしたときに「来週の火曜は病院でしたね」と一言添えるだけで、予定が親の頭に残りやすくなります。予定を書いた紙は、親がいつも見る場所に貼っておきます。

楽しみを1つ残す

必要な外出だけで予定を埋めると、「用事のために出る」ことしか残りません。親が好きだった場所や集まりを1つ、足の確保の対象に入れておきます。孫の顔を見に行く、昔の友人と会うなど、親にとって意味のある外出ほど続きます。

離れていてもできる関わり

返納後は、家にいる時間が長くなります。一人暮らしの場合、日中の様子が家族からは見えにくくなります。外出が減っても、短い接点を毎日続けておくと、「いつもと違う」ことに早く気づけます。

BabuuTalkの端末の「今日の予定」画面。お薬やデイサービスの時刻と「わかった」「呼ぶ」ボタンが大きく表示されている
実家のタブレットの「今日の予定」画面。通院日や集まりの予定を家族が入れておくと、当日の朝に親の目に入ります

BabuuTalk は、毎日決まった時間の声かけと、その応答が家族に通知される見守りです。LINE から書いた予定や伝言が、実家の端末の掲示板に出るので、「火曜は病院、送迎は〇時」のような連絡を電話以外の形でも届けられます。Android端末(タブレットや使っていないスマホ)があればアプリは無料で、続けて使うなら画面の大きいタブレットが見やすい、というのが目安です。

電話に出ないときの確認の順番は親が電話に出ない。心配なときに確認する順番にまとめています。見守りを何から始めるかは親の見守り、何から始める?機器を選ぶ前にやることをご覧ください。

返納前後の流れ

ここまでを、時系列でまとめます。順番は、手続きの前に「行き先」を聞くところから始まります。

免許を返す前後の流れを示す図解。1.行き先を聞く、2.手段を決める、3.返納して証明書、4.毎日の接点の4段階
返納の手続きは、4段階のうち3つ目です。前後の準備が、暮らしを左右します

なお、運転技能検査に通らなかったときの更新の仕組みは75歳以上の免許更新、何が変わる?家族が確認することで扱っています。「返納」と「更新できない」は、話の入口が違うだけで、そのあとに必要な準備は同じです。

今日、親に聞くこと

今日の電話では、「免許をどうするの?」ではなく、「先月、車でどこに行った?」と聞いてみてください。病院、スーパー、友人の家など、行き先が出てきたら、それぞれにどう行くかを、一緒に1つずつ考えます。

答えが出なくても構いません。行き先の一覧ができたら、次は親の住む市区町村の地域包括支援センターに電話して、「親が免許を返納する予定で、移動に困りそうです。使える制度はありますか」と聞いてみてください。この2つで、返納のあとの暮らしの準備の半分は進みます。

FAQよくある質問

免許を返納したら、運転経歴証明書はいつまでに申請すればいいですか?
警察庁によると、自主返納や失効から5年以上たつと交付を受けられません。返納と同時に申請する人が多いですが、あとから申請する場合も5年以内が目安です。申請場所や必要書類は、各都道府県警察の運転免許センター等で確認してください。
運転経歴証明書は身分証明書として使えますか?
平成24年4月1日以降に交付されたものは、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として使えると警察庁が案内しています。返納するとこれまでの免許証が身分証にならなくなるので、親が病院や銀行で困らないよう、返納とあわせて申請を考えておくと安心です。
返納した人への特典は、どこでも同じですか?
地域や事業者によって異なります。たとえば大阪府では、返納した65歳以上の人が運転経歴証明書などを提示すると、加盟企業で割引やサービスを受けられる制度があります。実家の地域の内容は、都道府県警察や市区町村の案内で確認してください。
離れて暮らしていて送迎ができないとき、まずどこに相談すればいいですか?
親の住む市区町村の地域包括支援センターです。高齢者とその家族の総合相談を受け付けていて、地域の送迎・移動の支援や、配食などの生活支援につなぐ窓口になります。電話で「親が免許を返納する予定で、移動に困りそう」と伝えれば足ります。
返納したあと、親が家にこもりがちにならないか心配です。何ができますか?
外出の理由を先に作っておくことです。通院日や集まりの予定を家族が一緒にカレンダーに書き、移動手段まで決めておきます。あわせて、毎日の声かけなど短い接点を続けると、いつもと違う様子に早く気づけます。
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