親が免許を返納したあと、生活をどう支える?
親が運転をやめたあとの通院・買い物・外出をどう確保するか。返納前に家族で決めること、運転経歴証明書の期限、地域の相談先を一次情報から整理します。
目次
この記事の要点
- 返納のあとに困るのは、手続きより「行き先ごとの足」
- 運転経歴証明書は、返納などから5年以内に申請する
- 外出が減っても、毎日の接点があれば変化に気づける
「お父さんが、そろそろ免許を返すと言い出した」。そう聞いて、安心しながらも、次の心配が浮かぶ人は多いと思います。病院はどう通うのか、買い物は、友人の集まりは。運転は事故の心配だけでなく、暮らしの足でもあったからです。
この記事では、返納のあとの暮らしを支える方法を整理します。先に結論です。手続きよりも、返納する前に「行き先ごとの足」を決めておくことが大事です。家族が毎回送迎する前提にすると続かなくなるので、地域の仕組みと、離れていてもできる関わりを組み合わせます。
返納で何が変わるか
返納は、運転を続けるかどうかの判断であると同時に、「運転免許証」という身分証をなくす手続きでもあります。変わることは大きく2つあります。1つは、自分で運転して行く手段がなくなること。もう1つは、免許証で済んでいた本人確認を、別のもので行うことです。
身分証の代わり
警察庁によると、運転免許を自主返納した人や、更新せずに失効した人は、運転経歴証明書の交付を受けられます。平成24年4月1日以降に交付されたものは、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として使えます。ただし、自主返納や失効から5年以上たつと交付を受けられません。出典:警察庁「運転免許証の自主返納について」
返納の窓口で一緒に申請するのがいちばん確実です。申請場所や必要書類は都道府県ごとに違うので、返納の予定日が決まったら、親の住む地域の運転免許センターや警察署に確認してください。
特典は地域しだい
返納した人向けの特典は、都道府県や市区町村、事業者ごとに内容が違います。大阪府の「高齢者運転免許自主返納サポート制度」では、返納した65歳以上の人が運転経歴証明書などを提示すると、加盟企業で割引やサービスを受けられます。提示の方法として、マイナンバーカードと交付済みシールなども案内されています。出典:大阪府「高齢者運転免許自主返納サポート制度」
特典はあくまで「あれば助かる」ものです。特典の有無で返納を決めるのではなく、実家の地域に何があるかを調べる材料にしてください。
行き先で足を決める
「移動手段をどうするか」と大きく考えると、話が進みません。親がこの1か月に実際に運転して行った場所を、1つずつ聞いてみてください。行き先ごとに、必要な頻度と、向いている手段が違います。
| 行き先 | 頻度 | 向く足 |
|---|---|---|
| 病院・薬局 | 月に数回 | 送迎、タクシー、通院のバス |
| 食料品の買い物 | 週に数回 | 宅配、買い物代行、近所の店 |
| 友人・趣味の集まり | 週に1回前後 | 乗り合い、仲間と相乗り |
| 役所・銀行 | 年に数回 | 家族の付き添い、窓口の代行 |
病院は最優先
通院は、行けなくなると困る度合いがいちばん大きい行き先です。診察日が決まっているので、家族の予定を合わせやすい面もあります。通う病院が駅やバス停から遠い場合は、診察券と一緒に「帰りの足」まで決めておくと安心です。
かかりつけ医を、バスや駅から無理なく通える場所へ変える選択肢もあります。これは医療の判断になるので、親と主治医に相談して決めてください。
買い物は仕組みに任せる
毎週の買い物を家族の送迎にすると、いちばん早く続かなくなります。宅配や買い物代行、移動販売など、家族の予定に左右されない手段を1つ入れておくと、送迎の負担がぐっと減ります。親が自分で選ぶ楽しみを残したいときは、週1回だけ家族が連れて行き、残りを宅配にする組み合わせもあります。
家族の送迎に頼りきらない
返納直後は「週末は毎回送迎する」と約束していても、仕事や子どもの行事が重なると、少しずつ回数が減ります。家族のせいではなく、距離がある以上、起こりやすいことです。約束が崩れる前提で、地域の仕組みを入れておくと、家族も親も気持ちが楽になります。
地域の窓口に聞く
親の住む市区町村の地域包括支援センターが、最初の相談先になります。厚生労働省によると、地域包括支援センターは市町村が設置する、高齢者の総合相談の窓口です。高齢者本人だけでなく家族も相談でき、配食や見守りなど日常の生活支援の調整役も担います。出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」
移動の支援の内容(タクシー利用の助成や乗り合いの交通など)は自治体によって違うため、「どんな制度があるか」を電話で聞くのが近道です。窓口の探し方は親の介護、最初の相談先は?遠方の家族が電話する前にで、見守り事業の調べ方は自治体の高齢者見守り事業、実家にもある?調べ方で整理しています。
外出の理由を残す
足が決まっても、「出かける理由」がなければ外出は減ります。運転は、買い物のついでに寄り道したり、知人と会ったりする機会も運んでいました。返納のあとは、目的のある外出を意識して作る必要があります。
予定を書き込む
通院日、集まりの日、買い物の日を、親と一緒にカレンダーに書き込みます。電話をしたときに「来週の火曜は病院でしたね」と一言添えるだけで、予定が親の頭に残りやすくなります。予定を書いた紙は、親がいつも見る場所に貼っておきます。
楽しみを1つ残す
必要な外出だけで予定を埋めると、「用事のために出る」ことしか残りません。親が好きだった場所や集まりを1つ、足の確保の対象に入れておきます。孫の顔を見に行く、昔の友人と会うなど、親にとって意味のある外出ほど続きます。
離れていてもできる関わり
返納後は、家にいる時間が長くなります。一人暮らしの場合、日中の様子が家族からは見えにくくなります。外出が減っても、短い接点を毎日続けておくと、「いつもと違う」ことに早く気づけます。
BabuuTalk は、毎日決まった時間の声かけと、その応答が家族に通知される見守りです。LINE から書いた予定や伝言が、実家の端末の掲示板に出るので、「火曜は病院、送迎は〇時」のような連絡を電話以外の形でも届けられます。Android端末(タブレットや使っていないスマホ)があればアプリは無料で、続けて使うなら画面の大きいタブレットが見やすい、というのが目安です。
電話に出ないときの確認の順番は親が電話に出ない。心配なときに確認する順番にまとめています。見守りを何から始めるかは親の見守り、何から始める?機器を選ぶ前にやることをご覧ください。
返納前後の流れ
ここまでを、時系列でまとめます。順番は、手続きの前に「行き先」を聞くところから始まります。
なお、運転技能検査に通らなかったときの更新の仕組みは75歳以上の免許更新、何が変わる?家族が確認することで扱っています。「返納」と「更新できない」は、話の入口が違うだけで、そのあとに必要な準備は同じです。
今日、親に聞くこと
今日の電話では、「免許をどうするの?」ではなく、「先月、車でどこに行った?」と聞いてみてください。病院、スーパー、友人の家など、行き先が出てきたら、それぞれにどう行くかを、一緒に1つずつ考えます。
答えが出なくても構いません。行き先の一覧ができたら、次は親の住む市区町村の地域包括支援センターに電話して、「親が免許を返納する予定で、移動に困りそうです。使える制度はありますか」と聞いてみてください。この2つで、返納のあとの暮らしの準備の半分は進みます。