親が冬に暖房を使わない。離れていてできる声かけと備え
電気代や我慢のために暖房を使わない親へ、理由別の声かけ、室温の測り方、暖房器具の安全の確認を、国土交通省とNITEの資料をもとに整理します。
目次
この記事の要点
- 暖房を使わない理由は、もったいない・寒くない・怖いの3つが多い
- 理由によって効く声かけが違う。まず温度計で室温を見える形にする
- 暖房器具は使い方の確認もセット。就寝時のつけっぱなしは避ける
冬が近づくと、実家の親が暖房を使わずに過ごしていないか、気になる方は多いと思います。電話では「大丈夫、寒くないよ」と言うのに、帰省してみると、ひざ掛けを重ねてコートを着たまま居間に座っていた、という場面は珍しくありません。
結論から言うと、まず「なぜ使わないのか」を3つの理由のどれかに当てはめ、理由に合った声かけをします。そのうえで温度計で室温を見える形にし、暖房器具の安全も一緒に確認します。この記事では、離れて暮らしていても今できることを、順番に整理します。
暖房を使わない3つの理由
親が暖房を使わない理由は、大きく3つに分けられます。理由が分かれば、効く声かけも見えてきます。
- もったいない 電気代や灯油代が気になる。長年の習慣で、我慢するのが当たり前になっている
- 寒くない 本当に寒さを感じにくくなっている、または寒いと認めたくない
- 怖い つけっぱなしや消し忘れで、火事や事故になるのが不安
大事なのは、「使いなさい」と正面から言うより先に、どれが近いかを聞き出すことです。電話で「寒くなってきたね、部屋はどうしてる?」と軽く聞くだけでも、返ってくる言葉から見当がつきます。
寒い家は体に負担
寒い部屋で過ごすことが、体にどう影響するのでしょうか。国土交通省の資料では、冬の室温が低い住宅に住む人ほど、健康診断の結果に違いが出ることが示されています。
国土交通省「健康&快適生活」によると、室温が12〜18℃の住宅に住む人は、18℃以上の住宅に住む人に比べて、心電図の異常所見がある人が1.8倍でした。12℃未満では2.2倍です(令和4年11月時点の掲載)。
同じ資料では、居間や脱衣所の室温が18℃未満の住宅で、熱めの入浴(42℃以上)をする人が約1.7倍に増えるとも示されています。寒い家では、寒さをしのごうと熱い湯に入りがちになり、入浴中の事故につながりやすくなるわけです。これらは住宅の調査から分かった傾向で、一人ひとりの結果を言い当てるものではありません。
理由別の声かけ
理由が見えたら、それに合わせて言葉を選びます。どれも、親の考え方を否定しないことが前提です。
もったいないと感じている親
倹約は、長い間守ってきた親の価値観です。「ケチらないで」と言うと、かえって意固地になります。「寒い部屋にいるほうが体への負担が大きいらしいよ」と、体の話として伝えるほうが受け入れられます。
あわせて、使う部屋を居間1つに絞る、こたつやひざ掛けと組み合わせるなど、親が納得できる使い方を一緒に決めておきます。部屋全体を暖めようとせず、「いる場所だけ」と決めると気持ちの負担も減ります。
寒くないと言う親
寒さを我慢している人は、「寒い」と認めること自体に抵抗がある場合があります。体感の議論は平行線になりやすいので、温度計の数字を使います。「今日は居間が12度だったよ」と、事実だけを伝えます。
数字を見せたあとは、使う・使わないの判断を本人に残します。「つけたほうがいい」と結論を押しつけず、「どう思う?」で終えると、次の電話でも話題にしやすくなります。
怖いと感じている親
消し忘れが怖くて使わない親には、不安の元を減らす道具を一緒に探します。切り忘れを防ぐタイマーが付いたものや、転倒時に自動で止まるものがあります。何を選ぶかは、親の使い慣れた形に合わせて決めます。
次の節で紹介するNITEの資料を見せながら、「使い方さえ決めておけば大丈夫だよ」と伝えるのも一つの方法です。怖さを否定せず、「怖いから使わない」から「怖くない形で使う」へ移せるように手伝います。
温度計で見える形に
離れて暮らしていると、実家の室温は分かりません。いちばん手軽な備えは、居間と寝室に温度計を置くことです。電気を使わない置き型で十分で、親が毎日目に入る場所に置きます。
置く高さにもコツがあります。立って見る高さより、座って過ごす床に近い高さのほうが、実際に体が感じる室温に近くなります。窓の近くや暖房の吹き出し口の近くは、数字が極端に出やすいので避けます。
| 置く場所 | 見え方 |
|---|---|
| 座る位置の近く | 体感に近い |
| 床に近い高さ | 足元の冷えが分かる |
| 窓のそば | 冷えすぎて出る |
| 暖房の吹き出し口 | 高く出すぎる |
温度計があれば、電話で「今、居間は何度?」と聞けます。数字が出てくる会話は、「寒くない?」「大丈夫」のやり取りより、状況が伝わります。窓に厚手のカーテンをかける、すきま風が入る場所をふさぐなど、暖房の電気代をかけずにできる工夫も、帰省の機会に一緒に見ておきましょう。
暖房器具の安全も確認
暖房を使ってもらうなら、安全の確認とセットにします。製品評価技術基盤機構(NITE)は、暖房器具の事故をまとめています。
NITE「暖房器具の事故により5年間で107名死亡」によると、2013〜2017年度に通知された暖房器具の事故は1,064件で、うち死亡事故が96件(107人)でした。被害者の年齢が分かる死亡事故76件のうち、70歳代以上が54件(71%)を占めています。事故は10月ごろから増え、年末から年始にかけてピークを迎えます。
同じ資料で挙げられている予防のポイントは、次のとおりです。帰省したときに、親の使い方と照らし合わせてみてください。
- 近くに可燃物を置かない ストーブの近くで衣類を乾かしたり、布団が触れたりしていないか
- つけたまま寝ない 就寝時や使わないときは、電源を切ってプラグを抜く
- 給油の前に消火する タンクのふたをしっかり閉め、灯油とガソリンは別の容器に入れて別の場所に保管する
- リコールの確認 使っている機器が対象になっていないか
給油や重い灯油缶の運び出しが負担になってきたら、暖房の種類を変えるタイミングかもしれません。使う側が楽な方法に切り替えるのが、安全にも暖かさにも近道です。
毎日の声かけに天気を足す
暖房の話は、電話で一度すれば終わりではありません。冬の間、気づいたときに繰り返し触れる形にしておくほうが続きます。ポイントは、返事が「うん」だけで済む、軽い声かけにすることです。
- 天気と部屋のひと言 「今日は冷えるね。部屋は暖かくしてる?」と、問い詰めずに聞く
- 時間を決める 夕方など、同じ時間帯に1日1回だけ送る。続けやすさが何より大事
- 返事が無い日は電話 いつもの時間に返事が無ければ、気にかけて電話する
BabuuTalkは、家族が書いた伝言が実家のタブレットに大きく表示され、親は「わかった」を押すだけで応えられる仕組みです。Android端末(タブレットや使っていないスマホ)があればアプリは無料で、続けて使うならタブレットが見やすい画面です。「今日は冷えるよ、部屋を暖かくしてね」と添えておくと、文字が打てない親にも天気の話を届けられます。
毎日のやり取りが習慣になると、返事の様子が変わったときにも気づきやすくなります。見守りの全体像は親の見守り、何から始める?機器を選ぶ前にやることで、返事が無いときの確認の順番は親が電話に出ない。心配なときに確認する順番で整理しています。
今日できる、最初の一歩
最後に、今日から始められることを2つ挙げます。
- 次の電話で、部屋の様子を聞く。 「寒くなってきたけど、部屋は暖かくしてる?」と軽く聞き、3つの理由のどれに近いかを探ります
- 温度計を1つ、実家に用意する。 帰省のときに居間に付けるか、すぐに帰省できなければ、親に頼んで買ってきてもらう形でもかまいません
入浴まわりの備えは実家のヒートショック対策、一人暮らしの親に何ができる?にまとめています。体調に気になる変化があれば、かかりつけ医にご相談ください。暖房を使わない理由は人それぞれです。理由に合わせて、親が自分で選べる形を一緒に作っていきましょう。