親の耳が遠くなってきた。テレビ電話の声が聞こえにくいときの工夫
テレビ電話は電話より聞こえにくくなりやすい理由と、話し方・置き方・字幕という3つの工夫を、公的機関の情報をもとに整理します。
目次
この記事の要点
- テレビ電話は音声の圧縮や生活音が重なり、対面より聞こえにくい
- まず変えられるのは話し方と環境。次にタブレットの置き方
- 補聴器の出力先の合わせ方や、「字幕」という選択肢もある
「テレビ電話をしても、何度も『え?』と聞き返される」「電話のときより会話がかみ合わない気がする」。そんな違和感を覚えている方は少なくないと思います。実は、テレビ電話には普通の電話よりも聞き取りにくくなりやすい理由がいくつか重なっています。
先に結論を書きます。声の大きさだけを工夫しても、テレビ電話の聞こえにくさは半分しか解決しません。 環境と話し方、機器の置き方、そして「聞く」以外の手段を組み合わせることで、会話はぐっと楽になります。この記事では、その3つを順番に整理します。
電話より聞こえにくい理由
耳の聞こえは、多くの人にとって60代後半から少しずつ変化します。国立長寿医療研究センターによれば、70歳代前半では男性の約50%、女性の約40%に、80歳代では男性の約80%、女性の約70%に軽度以上の難聴がみられるとされています(出典:国立長寿医療研究センター「補聴器は何歳から必要?」)。特別なことではなく、多くの家庭で起きる自然な変化です。
そのうえで、テレビ電話には固有の聞こえにくさが重なります。音声が圧縮されて届くこと、タブレットのスピーカーが本人の顔ではなく横や下を向きがちなこと、テレビや換気扇の音がマイクに一緒に乗ってしまうことの3つです。対面や固定電話では起きにくい条件が、画面越しの会話では重なりやすくなります。
対面
声も表情も直接届く
- 声の届き方
- その場の空気で直接
- 対応機器
- 特になくても成立する
固定電話
声だけが専用回線で届く
- 声の届き方
- 圧縮されずそのまま
- 対応機器
- 特大音量など専用機種がある
テレビ電話
声も表情も画面越しに届く
- 声の届き方
- 圧縮されて届く
- 対応機器
- 聞こえに特化した機種はまだ少ない
同じ「声で話す」手段でも、聞こえやすさの条件は違います
固定電話には、NTT東日本が特大音量・骨伝導・話速変換といった機能を備えた電話機を「福祉電話」として案内しています。一方でテレビ電話には、まだ同じような専用機種が一般的ではありません。だからこそ、次の章からの工夫が現実的な選択肢になります。
まず変えたい話し方
テレビ電話中の話し方は、対面のときより少しだけ意識を変える余地があります。一文を短く区切り、名前や日時などの聞き取ってほしい言葉の前に一拍おくだけでも、伝わり方が変わります。早口にならず、いつもより少しゆっくり、はっきり発音することも基本です。
環境音を減らすことも効果があります。テレビや換気扇がついたままだと、マイクがその音も一緒に拾ってしまいます。テレビ電話をかける前に、「テレビ、消すね」と実家に一言かけてから始めるだけで、届く声の明瞭さが変わります。家族の側の声も、キッチンの水音や換気扇の下では届きにくくなるので、かける場所を一度見直してみてください。
タブレットの置き方
スピーカーの向きは、意外と見落とされがちです。タブレットを立てかけるとき、画面(カメラ)は本人の顔に向いていても、スピーカーが端末の側面や背面にあり、音が横や後ろに逃げていることがあります。特に厚みのあるケースやスタンドを使っていると、この向きのずれが起きやすくなります。
見直すポイントは2つです。本体を、本人が座る位置の正面に、顔の高さに合わせて置くこと。そして、テーブルの端ではなく、壁や物から少し離れた場所に置くことです。壁際に寄せすぎると、音が反射してこもって聞こえることがあります。帰省したときや、次に実家に電話をかけたときに、一度この2点を確認してみてください。
補聴器を使っているなら
補聴器を使っている場合、音量を上げるより先に試したいことがあります。多くの補聴器には、Bluetoothで音声を直接届けたり、電話の音声に自動で切り替わったりする機能が備わっています。テレビ電話の音声もこの仕組みで受け取れる機種があるので、購入した店舗や取扱説明書で対応しているか確認してみてください。
聞こえにくさが急に強まった、片耳だけ聞こえにくいといった変化があるときは、自己判断で様子を見ず、耳鼻咽喉科への相談を勧めてください。国立長寿医療研究センターも、60歳代後半からは聞こえの検査を受けることをすすめています。ここで挙げた工夫は、日々の会話を楽にするためのものです。聞こえの変化そのものへの対応は、耳鼻咽喉科の役割になります。
字幕という選択肢
話し方と置き方を整えても、名前や数字、聞き慣れない言葉だけは聞き取りにくいまま残ることがあります。そんなときは、「聞く」だけに頼らず、「読む」を組み合わせる方法があります。
テレビ電話の中には、通話中の会話を自動で文字にして画面に表示する仕組みを持つものもあります。BabuuTalkもそのひとつで、テレビ電話中に話した言葉が自動で字幕として画面に出るため、聞き取れなかった部分もあとから文字で追えます。
字幕は、聞こえを補う手段のひとつであって、補聴器のように音そのものを補うものではありません。「聞く」と「読む」の両方を使えるようにする選択肢として、聞き返しが増えてきたと感じたときに試してみる価値があります。
今日、試したいこと
この記事を読み終えたら、次の3つのうち1つだけでも試してみてください。
- 次にテレビ電話をかける前に、実家のテレビや換気扇を消しておく。それだけで声の明瞭さが変わります
- タブレットの位置を、親が座ったときの顔の高さに合わせ直す。壁際から少し離すことも忘れずに
- 聞き取れなかった言葉が増えてきたと感じたら、耳鼻咽喉科での検査を一度勧めてみる
聞こえにくさへの向き合い方は、親が電話に出ない。心配なときに確認する順番とも重なる部分があります。テレビ電話の操作そのものが難しいと感じている場合は、親がスマホもタブレットも使えなくても、テレビ電話はできる?も参考にしてください。どれも今日から少しずつ試せる、小さな見直しです。