認知症の親が行方不明に。家族がまずすることの順番
認知症の親が行方不明になったとき、家族が最初にすべきことと、届け出が早いほど見つかりやすい理由、GPSや事前登録という備え、長期化した場合の介護保険料の扱いを、警察庁と厚生労働省の資料をもとに整理します。
目次
この記事の要点
- 親の姿が見えないと気づいたら、様子を見ずにすぐ警察に行方不明者届を出す。届出は家族なら誰でも出せて、時間がかかるほど発見が遅れる
- 警察庁の統計では、認知症の行方不明者の多くが届出当日か3日以内に所在確認されている。発見のきっかけの半数近くは地域住民からの通報
- GPS機器等や自治体の事前登録は、備えとして検討する価値がある。普段の見守りだけで行方不明そのものを防ぐことはできない
- 何年も見つからない場合の介護保険料は、2026年9月の国の通知で、家族の負担を考えて全額免除としてよいとされた
実家の親の姿が見えない。電話にも出ない。数時間経っても連絡がつかない――。認知症のある親がいる家族にとって、一度は頭をよぎる場面だと思います。この記事では、その瞬間に家族が取るべき行動を、警察庁と厚生労働省が公表した資料をもとに順番に整理します。
先に結論を書きます。「もう少し待ってから」を選ばず、気づいた時点ですぐ警察に行方不明者届を出してください。 届出が早いほど、当日中に見つかる可能性が上がることが統計から分かっています。そのうえで、GPS機器等や自治体の事前登録という備えを知っておくこと、そして長期化した場合に介護保険料がどう扱われるかも、この記事でまとめて確認できます。
まず、警察に届け出る
行方不明に気づいたら、家出や外出の延長だと考えて様子を見るのではなく、その場で最寄りの警察署に行方不明者届を出すか、110番に連絡してください。届け出られるのは、行方不明者の住所地を管轄する警察署、行方不明になった場所を管轄する警察署、届出人自身の住所地を管轄する警察署のいずれかです。家族や同居人であれば届け出ることができ、警視庁「行方不明者相談のご案内」では、行方不明者の写真や届出人の身分証、服装や特徴が分かる資料があると手続きがスムーズになると案内されています。ただし、これらが揃っていないからといって届出を後回しにする必要はありません。
「まだ数時間だから」「警察に相談するほどでもないかもしれない」とためらう家族は少なくありません。ですが、次の章で見るとおり、発見までの時間は届出のタイミングに大きく左右されます。迷っている時間そのものが、発見を遅らせる時間になります。
届け出たあと、何が起こるか
行方不明者届が受理されると、警察は捜索を始めるとともに、必要に応じて自治体や地域の関係機関に情報を共有します。大阪府「認知症高齢者等の行方不明時の早期発見・保護のために」によると、家族が警察署や市町村に通報すると、警察・消防・地域包括支援センター・介護サービス事業者・コンビニ・タクシー会社・バスや鉄道の事業者・郵便局など、地域の「見守りSOSネットワーク」に参加する機関へ、身体的特徴や服装といった情報が一斉に伝えられる仕組みがある自治体があります。
このネットワークが機能するのは、家族がまず届け出たあとの話です。事前に自治体へ本人の情報を登録しておく制度もあり、市町村によって登録できる項目や方法が異なるため、実家がある自治体の地域包括支援センターに、平時のうちに確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
早く動くほど、見つかりやすい
「様子を見てから」を選ばないほうがいい理由は、警察庁の統計にはっきり表れています。警察庁「令和7年における行方不明者届受理等の状況」によると、令和7年の認知症行方不明者数は1万7,345人で、依然として高い水準が続いています。このうち令和7年中に所在確認・死亡確認された人について見ると、94.8%が届出受理から3日以内に所在が確認されており、届出当日中に確認された人の割合は68.0%にのぼります。逆に、受理から15日以降は、所在確認よりも死亡確認の割合のほうが高くなるとされています。
発見のきっかけとしていちばん多いのは、警察のパトロールでも防犯カメラでもなく、地域住民からの通報です。警察庁「令和7年における行方不明者届受理等の状況」では、所在確認等がなされた認知症行方不明者のうち47.0%が民間通報をきっかけに発見されたと報告されています。家族だけで捜し回るよりも、警察に届けて地域全体で気にかけてもらえる状態を早く作ることが、結果的に発見を早めます。
| 届出からの経過 | 所在確認の傾向 | |
|---|---|---|
| 当日中 | もっとも多くの人が所在確認されている | |
| 〜3日以内 | 所在確認・死亡確認された人の大半を占める | |
| 15日以降 | 死亡確認の割合のほうが高くなる |
備えられることを比べる
行方不明になってからではなく、なる前に検討できる備えもあります。それぞれ役割が違うので、何を補いたいかで選び方が変わります。
GPS機器・紛失防止タグ
位置情報から捜索する
- 分かること
- 今どこにいるか、あるいは最後にいた場所
- 向く場面
- 外出先を特定して早く迎えに行きたいとき
- できないこと
- 外出そのものを止めることはできない
自治体の事前登録
地域に情報をあらかじめ渡す
- 分かること
- 万一のとき、地域の関係機関へ共有される特徴
- 向く場面
- 普段から近所の目にとまりやすくしたいとき
- できないこと
- 制度の有無や登録項目は自治体ごとに違う
毎日の会話・声かけ
普段との違いに気づく
- 分かること
- いつもと様子が違う、応答がないという変化
- 向く場面
- 外出そのものより体調や気配の変化を知りたいとき
- できないこと
- 今どこにいるかは分からない
行方不明への備えは1つに絞らず、目的に応じて組み合わせて考えます
警察庁「令和7年における行方不明者届受理等の状況」には、GPS機器等の活用によって所在確認・死亡確認がなされた事例も紹介されています。GPS機器等が使われたケースでは84.9%が受理当日中に所在確認されており、位置情報が分かっていることは、捜索の初動を大きく早めます。ただし、この数字はGPS機器等を持たせていた家族に限った数字であり、持たせていなければ見つからないという意味ではありません。
見守りにできることと、できないこと
BabuuTalkのような会話型の見守りも、この「毎日の会話・声かけ」に当たります。タブレットのキャラクターが毎日決まった時間に声をかけ、応答の有無や、家族からの呼びかけに出るかどうかで、実家の様子を確認する仕組みです。
ここで、できないことをはっきりさせておきます。BabuuTalkに位置情報を追跡する機能はなく、外出や行方不明そのものを防ぐ仕組みでもありません。 「いつもの時間に応答がない」「呼びかけても出ない」という変化に気づく助けにはなりますが、気づいたあとにすべきことは、この記事の最初に書いたとおり、警察への届出です。見守り機器があるからといって、様子を見る時間を延ばしてよい理由にはなりません。
普段の見守りの始め方は親の見守り、何から始める?で、電話に出ないときに確認する順番は親が電話に出ない。心配なときに確認する順番で詳しく扱っています。緊急時に人を呼ぶボタンを備えた機器との違いは緊急通報装置と見守りサービス、何が違う?にまとめています。
長引いたときの、介護保険料の話
行方不明の状態が長く続くと、住民票の消除や被保険者資格の喪失といった行政手続きが進まないまま、介護保険料の請求だけが家族に届き続けることがあります。この点について、2026年9月時点で状況が変わりました。
厚生労働省「行方不明者の被保険者資格の喪失手続及び介護保険料の減免・返還に係る取扱いについて」(令和8年9月8日付の事務連絡)では、第一号被保険者が行方不明となった場合、住民票の消除手続きが長期に及ぶ可能性を踏まえ、行方不明者の家族の負担に鑑みて、市町村の判断で保険料を減免して差し支えないとされました。さらに、失踪宣告などにより法的に遡って死亡したとみなされる場合は、死亡したとみなされる日の翌日以降に納めた保険料が市町村側の不当利得となり返還義務が生じることを踏まえ、全額免除としても差し支えないとされています。減免の申請には、警察が発行した行方不明者届の受理に係る証明書類、または公的年金の支給停止を証明する書類などの添付が考えられるとされています。
この取扱いは自治体ごとの運用に委ねられており、すべての市町村が同じ対応を取ると決まったわけではありません。発表時点の情報であり、実際の適用は市区町村の介護保険担当窓口への相談が必要です。 行方不明者届の受理証明書は、警察署の生活安全担当に申請して発行してもらえます。請求が続いて困っている場合は、まず窓口に「行方不明者届を出している」ことを伝えるところから始めてください。
今日、家族で決めておくこと
最後に、今日からできることを1つだけ挙げます。家族の間で、実家を管轄する警察署の電話番号を共有し、「様子がおかしいと思ったら、様子を見ずにすぐ届け出る」ことを話し合っておいてください。 行方不明者届は書類を揃えてから出すものではなく、気づいた時点ですぐ出すものです。届出をためらう時間が、そのまま発見を遅らせる時間になります。
そのうえで余裕があれば、実家がある自治体に事前登録の制度があるか、地域包括支援センターに確認しておくこと、GPS機器等を持たせることを検討してみることをおすすめします。普段の会話や声かけは、行方不明そのものを防げなくても、「いつもと違う」に早く気づく入り口にはなります。その気づきを、様子見ではなく届出につなげることが、家族にできる備えです。