認知症の親にGPSを持たせる前に、家族が考えること
認知症の親にGPSを持たせたいとき、本人への話し方、持ち方の選び方、自治体の助成を契約前に確認する理由、見つけたあとの動き方を、警察庁と自治体の公式情報をもとに整理します。
目次
この記事の要点
- 端末を選ぶ前に、本人への伝え方と「毎日持てる形」を決める
- 自治体の助成は購入前の申請が必要なことがある。先に窓口へ聞く
- 位置が分かった後に誰が見て、誰が迎えに行くかまで決めておく
認知症のある親が、ひとりで外出して帰ってこられなくなったらどうしよう。そう考えて、GPSを調べ始めた方は多いと思います。ところが、商品や助成制度を比べ始めると、本人にどう話すか、どんな形なら毎日持ってくれるか、といった肝心なことが後回しになりがちです。
この記事では、GPSを持たせる前に家族が決めておきたいことを、警察庁と自治体の公式情報をもとに整理します。先に結論を書くと、端末の性能を比べる前に、本人への話し方と持ち方を決め、助成を使うなら購入の前に窓口へ聞いてください。
GPSが役に立つ場面
最初に、GPSにできることを確認します。位置が分かることで、捜索の最初の動きが早くなります。
警察庁「令和7年における行方不明者届受理等の状況」(令和8年6月)では、令和7年の認知症行方不明者数は1万7,345人でした。令和7年中にGPS機器等の活用で所在確認・死亡確認された139人のうち、84.9%(118人)が届出受理の当日に所在確認されています。
同じ警察庁の資料では、所在確認・死亡確認された認知症行方不明者全体で、受理当日に確認された割合は68.0%(16,729人中11,369人)です。
この2つの数字は、条件の違う人たちの集計です。GPS機器等を持たせていなければ見つからない、という意味ではありません。それでも、位置の手がかりがあると当日中の発見につながりやすいことは、備えを考える理由になります。
①本人に話す
端末を選ぶ前に、本人と話す時間を取ってください。持つのは本人です。納得していない端末は、家に置いたまま出かけてしまうことがあります。
話すときは、「迷子になるのが心配」という言い方より、「出先で連絡が取りやすくなる」「みんなが安心できる」といった言い方のほうが受け入れられやすいことがあります。本人の様子に合わせて、言葉を選んでください。
②持ち方を決める
次に、毎日自然に持てる形を考えます。端末の種類より、本人が毎日持つ場所に置けるかが大切です。
持ち歩く端末は、バッグや服のポケットに入れる形です。小型で扱いやすい一方、バッグを替えたときに入れ忘れることがあります。
靴や身につける物は、靴の中に入れる、ベルトに付けるなど、毎日使う物に組み込む形です。立川市の事業では、端末を取り付ける専用の靴も案内されています。
スマホや時計は、もともと持っている物を使えるのが利点です。ただし、自治体の助成は機器の種類で対象が分かれます。次の章で確認します。
立川市「高齢者等位置情報確認サービス事業」では、持ち歩く端末で位置を確認する仕組みや、費用の一部を市が補助する仕組みが紹介されています。自治体ごとに内容は異なるため、実家の自治体の案内を見てください。
③購入の前に、助成を確認する
GPSの費用を一部助成する自治体があります。ここで気をつけたいのが、購入や契約の前に申請が必要なところがあることです。
十和田市「認知症の人を見守るためのGPS端末利用について初期費用を助成します」では、契約を予定しているGPS端末の初期費用が分かる書類を添えて事前に申請し、承認後に契約する流れです。契約後の申請は対象外とされています。市の事業への事前登録も条件です。
鹿児島市「高齢者見守り支援事業(GPS位置情報サービスの助成)」でも、購入前の事前着手の承認申請が必要で、事前申請なしの購入は対象になりません。スマートフォンやスマートウォッチのGPSサービスは対象外とされています。
このように、対象の人、対象の機器、申請の順番は自治体ごとに違います。助成が使えるか確認するには、実家のある市区町村の高齢者担当課か、地域包括支援センターに電話するのが近道です。聞くことは次の3つです。
- 対象の機器: 端末、サービス、スマホの扱い
- 申請の順番: 購入や契約の前に何が必要か
- 事前の登録: 見守りの事業などへの登録が条件か
④見つけたあとの動きを決める
位置が分かっても、そのあとの動きが決まっていないと、画面を見たまま時間が過ぎてしまいます。
決めておきたいのは、次の3つです。
誰が位置を見るか。 同居の家族、近くのきょうだい、遠方の自分など、見る人と連絡する順番を決めます。複数人で見られる仕組みなら、役割を分けられます。
誰が迎えに行くか。 遠方に住んでいると、現地へ向かえません。近所の人や、きょうだいに頼めるかを、平時のうちに相談しておきます。
いつ警察に届けるか。 位置が分かるから大丈夫と考えて、届出を遅らせないでください。姿が見えず、連絡も取れないときは、すぐに警察へ届け出ます。届出から発見までの流れは、認知症の親が行方不明に。家族がまずすることの順番で詳しく書いています。
GPSでは補えないこと
GPSは、行方不明になったときに早く見つけるための備えです。外出そのものを止める、体調の変化に気づく、といった役割は別のものが担います。
たとえば、持ち忘れや電池切れがあれば位置は分かりません。毎日の暮らしの変化は、GPSだけでは分かりません。親が同じ話を繰り返す、薬を飲み忘れる、電話に出ない。こうした変化は、普段のやり取りの中で気づくものです。
BabuuTalkは、毎日の声かけに応答があるか、家族からの通話や伝言に反応があるかで、普段との違いに気づく入り口になります。
Android端末(タブレットや使っていないスマホ)があればアプリは無料で、続けて使うなら画面の大きいタブレットが見やすい、という使い方です。位置の確認はGPS機器等の役割で、BabuuTalkは気づいたあとに家族が声をかけたり、予定や伝言を送ったりする場面を支えます。
あわせて読んでほしい記事があります。電話に出ないときの確認の順番は親が電話に出ない。心配なときに確認する順番に、同じ話の繰り返しに気づいたときの対応は親が同じ話を繰り返す。家族が最初にできることにまとめています。
今日、電話で聞くこと
読み終えたあとの行動は1つです。実家のある市区町村の地域包括支援センターか高齢者担当課に電話して、「認知症の親にGPSを持たせたい。助成の対象と、申請の順番を教えてください」と聞いてください。
窓口が分からなければ、厚生労働省「地域包括支援センターの概要」で役割を確認したうえで、市区町村の公式サイトから実家の担当を探せます。
電話をかけるときは、親の年齢、診断の有無、これまでに外出して戻れなくなったことがあるかをメモしておくと、話がスムーズです。購入は、窓口の答えを聞いてから。本人への話し方は、その前に家族で相談しておくのがおすすめです。